コケモモ(苔桃)
ツツジ科スノキ属の常緑小低木。果実を食用としますが、栽培されることは稀で、野生のものを採取するのが一般的です。自然での生育地はユーラシアの北部や北アメリカの周北林で、温帯から北極圏に近い地域まで分布します。 樹高は10-40 cm程度で、直立した幹はぎっしりと密集しています。森林に生育するため、日陰で湿度が高く、また土壌が酸性の場所を好みます。多くのツツジ科の植物と同様、栄養分の少ない土地でも耐えられますが、アルカリ性の土壌では生育できません。耐寒性にすぐれ、-40℃以下でも耐えることができる一方、夏が暑い場所では生育しにくいです。

コケモモはこうした寒冷地に生育する広葉樹には珍しいことに、冬でも葉を落としません。地中の根茎を伸ばすことで株が拡大します。初夏に長さ約6 mmの釣り鐘型の白い花をつけ、果実は直径7 mmほどで秋に赤く熟します。
コケモモとクランベリー(ツルコケモモ)はよく混同されますが、花が白く、花冠が部分的におしべと柱頭を囲っている点で異なる(クランベリーの花はピンク色で、花冠が後ろに反り返っている)。また、果実も球状で、クランベリーほど洋ナシ型にはなりません。コケモモと同じように果樹として利用されるスノキ属の植物としては、ブルーベリー、ビルベリー、ハックルベリーなどがあります。

野生のコケモモは非常に酸味が強いため、通常は砂糖などで甘みを加えて調理し、ジャムやコンポート(砂糖煮)、ジュース、シロップなどとして食用にします。コケモモのコンポートは肉料理の添え物とすることがあります。コケモモは有機酸、ビタミンC、βカロテン、ビタミンB類の他、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンを含みます。
葉には、尿路感染症に効くアルブチン 、メチルアルブチンなどの化学物質を含み、日本や北アメリカにおいては薬草として利用されます。